あなたのシステム、所有権はありますか? – 著作権について開発前に知っておくべきこと

独立してシステム営業を行うようになってから、ちょくちょく遭遇する問題がこれ。

制作会社側と何かしらトラブルになった時に発覚する事が多く、私のところに相談に来られる方々がこの問題に直面しています。

先に答えを言うと、システムの著作権は制作会社にあります。
著作権とは「成果物を作成した人(あるいは組織)に帰属する権利」ですので、システムのソースコードを作成した人(制作会社)が著作権を持つのです。

発注者がお金を払ったという事とは何の関係もありません。
お金の対価は、システムを利用する権利なのです。システムの所有権ではないのです。

モノを買う場合は、モノが手に入るのが当たり前ですから、そこを基準に考えるとおかしな話ですよね。お金を払ったのに自分のものではない。使ってよいだけの権利しかない、というのは。でもソフトウェアやデザインといった無形物はそうではないのです。
私は法律の専門家ではないからその理由について詳しくは語れませんが、いずれにしてもそういうものだ、というところで納得するしかないでしょうね。

ただ、著作権を譲渡する事をお互い合意すれば、発注者がその著作物、つまりソフトウェアを独占的に使用する事はできます。つまり契約書に著作権の譲渡を含めればよいわけです。

さて、ここまでの前提を踏まえ。
実際に著作権に関してどのようなトラブルがあったのか、事例を交えてお話していきます。

何もする事がなくなったので保守契約を止めようとしたら、ウェブサイトがなくなるよ、と言われた

ウェブサイトの構築を依頼したら次のような提案をもらいました。
・CMS(Contents Management System:ウェブサイトの更新管理システム)上に構築するから安く作れます
・CMSは業者が管理するため、保守契約が必要で毎月の支払が必要です

そういう提案だったので制作を依頼し、保守契約を締結。
最初は良かったのですが、数年経ちウェブサイトも更新することもなくなりました。毎月の保守料金も他のレンタルサーバー代より高いから保守はなくしてサーバー代だけでウェブサイトを維持したい。そう思い保守契約の解除を求めたところ、CMSの使用権がなくなるから契約解除したらウェブサイトはなくなります、と言われた。

事前の認識合わせが重要

ポイントは業者が提供しているCMSを使わないとウェブサイトが維持できない点です。
CMSは業者所有で、著作権を譲渡していません。
そのウェブサイトの元になるCMSを使ってよいかどうかを決められるのは制作会社側にあります。

発注者にはもちろん使用権はあります。しかしその対価がなければCMSを使い続けてよし、とはなりませんね。
ですから個人的には、業者の言い分はそれほどおかしいとは思っていません。

とはいえ、業者側は支払が終わった時の扱いについて、きちんと説明する必要はあるでしょう。業者は著作物を扱うプロフェッショナルですから、そのことについて説明するのが社会通念上必要でしょう。

もちろん発注者にも責任があると思います。
発注者は消費者ではありませんから、著作物を扱う以上そこに対し知らぬ存ぜぬは通用しません。責任をもって関わる必要があると思います。

契約解除しようとしたら「このサイトは制作会社に所有権があるから〇〇円で譲渡します」と言われた

お知らせやイベントなど頻繁に更新するサービスサイトの運用代行を制作会社が請け負っていたが、制作会社側で問題を起こし運用代行が十分に行われなくなった。そこで発注者は契約解除してサイトを別会社に引き継ごうとしたが、「所有権は制作会社にある。譲渡するのであれば〇〇円払ってください」と言われた。

自衛できる事はする

こちらも先の例と基本的には同じですが著作権を悪用されたかたちです。
関係性が良好なうちは良いですが、何か問題が生じた場合にどうするか、という事は対策した方がよいです。
「制作会社が運用代行を十分にしなくなった」の裏に制作会社の資金難がありました。システム運用に必要な人件費をかけられなくなったのです。そこで契約解除の話になり、著作権を盾にお金を得ようとしたのです。これは制作会社側の問題ですが、だからといって文句を言っても何も解決はしません。
あってほしくない事ですが、現実にはよく聞く話です。

だから、所有権の譲渡など契約でカバーできることはするし、それ以外にもウェブサイトやシステムへの直接のアクセス方法(例えばサーバー情報など)を発注者側でも把握しておく必要があるわけです。サーバーやドメインの管理など、よくわからないから制作会社に委ねる方もよく見かけますが、それは絶対に避けた方がよいです。自社で契約して、制作会社に貸与するかたちにしておきましょう。

著作権の譲渡を契約書で確約したのに、システムを動かすサーバーを開示してくれない

こちらは著作権の譲渡をした、サーバーも貸与したけれども問題が起きた例です。

発注者は著作権について知識があったので、契約前に「システムの所有権を発注者に譲渡する」という内容を契約書に明記しました。システムを動かすサーバーも自身の契約としました。

ここまでは良かったのですが、問題はサーバーへのアクセス権を業者から開示されず、システム(ソフトウェア)の提示もなかったという点です。

最初は問題ありませんでした。システム構築も無事終わり、サービス開始後も順調でした。
でもサービス利用者が増え収益も得られるようになった段階で、業者が突然の保守料金の値上げを要求したのです。それも10倍以上!当然承諾できませんから拒否しました。
そうしたら、突然サービスダウンが頻発し始めたのです。

発注者は契約解除を申し立ててシステムのソース一式とサーバーへのアクセス権を要求しましたが業者は無視。サービス停止が一番困るので現状の金額で保守料金を払い続けていますが、信頼関係はなくなり、業者変更を行うべく弁護士さんと相談をする事になりました。

サーバーへのアクセス権、ソフトウェアソースを実際に得る事が大事

契約もサーバー所有についても問題はなかったのですが。
実際に著作物を引き継ぐ事をしなかった事と、サーバーについてもよくわからないからとアクセス権をもらい実際にアクセスできることを確認しなかったのが問題です。

このケースは契約不履行ですから、裁判になってもおそらく勝つのでしょう。
でも、仮に裁判で勝ったとしても逃げられたらお終いです。

契約だけではダメで、著作物の実体であるソフトウェアと、それが稼働しているサーバーへのアクセス権といったものをしっかりと自分の手元に置いておく、というのが肝要なのです。

納品されたシステムを、別業者に追加改修してもらおうと思ったらできなかった

開発がトラブル続きで1年遅れでβバージョンが出来上がった。これ以上の追加開発は不安なので別業者に引き継いでもらおうと考えたが、契約書を見ると使用権しかなかったため、最初に依頼した開発会社しか触れない状態になっていた。しかも追加開発費用が当初想定していた金額の2倍以上になっていた。単価が安いから契約したのに、結果的に高い買い物になってしまった。

契約すればよい、というものではない

契約書は最初から提示されておりました。開発業者が弁護士さんに依頼して作ったもので、内容も「著作権は開発業者にあり使用権を貸与する、でも利用許諾の範囲は発注者のみと制限されている」というものでした。

最後の利用許諾を見て安心された。そのようにご相談いただいた方は仰っていました。
実際には契約書の内容をよく読んで、こういう場合にはどうなる、ということをしっかり把握する事が必要です。

契約前に出来る事はやりましょう

今回挙げた事例は、いずれもソフトウェアに対する認識不足に起因しています。
法律的な問題、ソフトウェアを含むシステムの取り扱いを知らない事に対する問題です。

上の事例をまとめると

・著作権(所有権)の譲渡を前提とする

・実際の著作物(ソフトウェア)を入手する

・ソフトウェアが実際に動いている環境にアクセスできる

ということです。

他にも、そのソフトウェアで足りているか、どうやってそれを動かせる状態にするか、といった技術的な要素も含まれますから、システムを全く知らない人間がシステムを扱う場合はそれなりにリスクを負う、という事は知っておいた方が良いでしょう。

とはいえ、リスクをそのままにするのは危険ですし、リスクに対処できるよう全部自分でやるのもナンセンスだと思っています。専門家が扱う領域ですから。

システム開発にまつわる「IT相談役」を承っております

今回のような事例は今後も起きるでしょう。
でもそれをそのまま放置するのも心苦しいです。

そこで「IT相談役」というサービスを始める事にしました。
システム開発やサイト制作以外にも、システムにまつわる様々な相談を毎月のサブスクリプション契約でお受けするサービスです。

最初は単発で相談をいただいていましたが、問題が顕著化する前に問題を問題として認識するためには、継続した関りが必要と考えました。そのため毎月のサブスクリプション契約としました。費用はどこまで関わるかを相談しながら決めたいと思っておりますが、気軽に関わっていただきたいのでおおよそ月1万円程度で考えています。

・システム導入を検討しているが、ITに詳しい人間が社内にいないから判断がつかない。

・社内SEを育成したい。技術的な事で相談したい。

・システム業者、ウェブサイト制作業者の言っている事が正しいかどうかわからない。

こういったお悩みをお持ちであれば、ぜひご検討下さい。
構築検討段階、構築中、運用中、それぞれのフェーズで社外CTO(最高技術責任者)、CMO(最高マーケティング責任者)的な関わり方で御社のビジネスをサポートします。

ぜひお気軽にお問い合わせ下さい。

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